白髪を科学する(2)マリー・アントワネットの「一夜白髪」は事実か

マリー・アントワネットは一夜にして白髪に(C)iStock

 マリー・アントワネットは、「女帝」と呼ばれたオーストリア大公マリア・テレジアの15番目の子供(十一女)で、14歳のときにフランス王太子(後のルイ16世)と政略結婚し、先代ルイ15世の崩御に伴う即位により18歳でフランス王妃になった。

 その後、フランス革命までの19年間に4人の子(2人は早逝)をなし、ベルサイユ宮殿の女主人として君臨。多くの芸術家の後見人になる一方で、赤字夫人と呼ばれるほど金を使い、フランス革命のときに民衆の憎悪の標的になった。国王一家は逃亡を図るが失敗し(バレンヌ事件)、ルイ16世は処刑され、マリー・アントワネットもその後、37歳で公開処刑されている。このとき多くの目撃者がいたことから、この時点で白髪だったのは間違いない。

 ただ、白髪化はバレンヌ事件の際に起こった可能性もあるという。5日間の逃亡の失敗後に出迎えた筆頭侍女が「髪の毛はあたかも70歳の老婆のように白かった」と回想録に残している。また、収監中に仕えていた小間使いは後に「こめかみには白髪があったが、ほかにはほとんどなかった」と証言している。

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