Dr.中川 がんサバイバーの知恵

脂質異常症、糖尿病、解熱鎮痛…ありふれた薬の抗がん効果

日常的に使われる薬に抗がん効果が

 鎮痛薬でおなじみのアスピリンは2011年、75ミリグラム以上を毎日服用するとがんによる死亡リスクが20%も低下。5年以上の服用では、胃や大腸など消化器がんの死亡リスクが50%以上も下がっていたのです。

 市販薬を含めて薬によっては見逃せない効果が見て取れます。中でも注目は、糖尿病治療で古くから使用されるメトホルミンです。米テキサス大の研究によると、この薬の服用者は、膵臓がんのリスクが62%も低下。肺がんや大腸がん、乳がんなど多くのがんで抗がん効果があったとする研究結果が報告されています。

 横浜市大は大腸ポリープ切除後の新規ポリープ発生が抑えられたとする結果を報告。この結果から大腸がんの予防効果がうかがえます。国立がん研究センターは、脳腫瘍のひとつ膠芽腫について、標準治療にメトホルミンを追加する臨床試験を行っています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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