「不登校」「ひきこもり」を考える

親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10原則~⑧⑨

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 こういう時には、「親に向かってその口のきき方はなんだ」「謝ったって時間はもう戻らないじゃない」といったような“売り言葉に買い言葉”に陥らず、「そんなふうに思うのね」「だとしたらとてもつらいわね」といったように、とにかく「つらかった」という気持ちにひたすら傾聴と共感を続けていくことが肝要です。お子さんが「そんなことしか言えないのか」「もっと言うことがあるだろう」と畳み掛けてきても、気の済むまで言わせることが大切です。そして、どこかで本当に親は変わったと確信した時、安心できたお子さんは別人のように穏やかな顔を見せるようになるのです。

 また、「激しく怒っている人や攻撃している人は、困っている人や泣いて悲しめない人」という心理学の言葉があるように、本当は当の本人もいくら親が謝ったところで失われた時が戻ってこないことは百も承知なのです。それでも、「そんな理不尽なことを言わないと気が済まないほど、本来感じなければならない一次感情レベルでつらかったことを未だに深く心から悲しみきれない。そのために、執着も断ち切れず、喉元がつかえるような苦しさが抜けない」ということを理解し、本人が心の底から泣けるほどに気が済むまで共感を続けることが、本当の意味での解決なのです。

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最上悠

最上悠

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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