天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

正当な手続きを踏まないカテーテル治療も行われている

 残念ながら、安易にカテーテル治療を施行する病院は全国に少なからず存在します。心臓や冠動脈の立体画像を驚くほど正確に映し出せる心臓3D―CTでは、65歳以上の高齢者になると、かなりの割合で冠動脈に石灰化による“狭窄まがい”の病変が浮き出してきます。その病変部を医師ではない放射線技師が「狭窄所見疑い」としてカテーテル治療の適応を判断し、それを受けた医師が「彼らの判断では……」などと診断治療を進める専門施設もあるほどです。

 患者さんにとって、何が適切な治療かを判断するには、医師の診断能力が重要です。正当な手続きが踏まれないままカテーテル治療が行われている場合、医師側が自分たちのやり方を患者さんに押しつけているか、病院の経営的な要素を疑わざるをえません。

 診察を受けている病院や医師に不安がある患者さんは、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。内科治療であるカテーテルをするべきか否かの判断は、別の循環器内科医の意見を聞くのがベストです。「他の病院でカテーテル治療を勧められたのですが、本当に必要ですか?」と聞いてみてください。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。