12年2月、天皇陛下の心臓手術に携わらせていただきました。
陛下は狭心症というご病気で、心臓に栄養や酸素を送る冠動脈3本のうち、2本の血管が狭くなっている状態でした。このままでは、心臓の筋肉に必要な栄養や酸素が届きません。そのため、狭窄がある血管に別の血管をつなぎ、血液がしっかり流れるようにバイパスをつくる「冠動脈バイパス手術」が必要でした。さらに、手術の負担をできるだけ軽減させるため、心臓を動かしたまま行う「オフポンプ手術」を選択しました。
従来の心臓手術は、血管を人工心肺装置につなぎ、心臓を止めて行うのが一般的でした。しかし、私が執刀する手術ではオフポンプ手術を選択するケースがほとんどです。心臓の拍動を止めている時間が長ければ長いほど、患者は確実に強いダメージを受けます。逆に心臓を止めずに手術を行えば、免疫力などの点でも患者の負担が大きく軽減され、術後の回復も早くなるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」