医療数字のカラクリ

糖尿病の早期発見に意味があるのか?

 糖尿病の血糖を下げる治療効果が、薬にせよ、食事・運動にせよ、意外に小さいことを示してきました。ならば、もっと早期に糖尿病を発見すれば効果があるのではないかと思われる読者の方がいるかもしれません。しかし糖尿病の早期発見の効果についても、2012年に意外な研究結果が報告されました。

 この研究では、将来糖尿病になる危険が高い2万人以上の平均年齢58歳の人を対象に、健診を受けた1万6000人と、健診を受けない4000人とを約10年間追跡しています。

 2つのグループの死亡率の結果を見てみると、健診を受けたグループで9・5%、受けないグループで9・1%と、健診を受けたグループでむしろ死亡率が高い傾向にあったという結果です。少なくとも糖尿病の早期発見の効果は示されていないわけです。

 もちろん10年という期間は、死亡に差が出るほど長くないので当然の結果という指摘もあります。しかし、それは見方を変えれば10年では差がつかないくらい効果が小さいということでもあります。70歳で健診により早期の糖尿病と診断された人も、健診を受けずに発見が遅れた人も、80歳の時点で生き死には差がないのです。ましてや80歳で糖尿病を心配するなどというのは、いかにナンセンスなことであるかを、この研究結果は明確に示しているといえるのではないでしょうか。後期高齢者が健診を受けないというのは、糖尿病に関して、根拠に基づいた科学的な態度なのです。

名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。