医療数字のカラクリ

初期の糖尿病は厳しい治療が重要

 糖尿病の厳しい治療に大きな効果は期待できないということを、繰り返し書いてきました。

 しかし、それはすでに長く糖尿病の治療を続けている患者の話で、「新しく糖尿病と言われた患者は厳しい治療が必要」という意見があります。背景にあるのは、UKPDS80(英国前向き糖尿病研究80)という論文です。

 これは、UKPDS33、34というこの連載で取り上げてきた論文の、さらに10年後の追跡結果です。

 最初の報告は治療開始から15年後の時点での結果ですから、最初15年は厳しい治療と緩い治療の比較、その後10年はどちらも厳しい治療が提供されています。

 結果を見ると、これまではっきりした効果が示されていないスルフォニル尿素とインスリン治療によっても、治療開始から25年時点の死亡が13%減少、少なく見積もって4%、多く見積もれば21%減るという結果です。心筋梗塞も15%、網膜症や腎症は24%減ることが示されています。病初期の厳しい治療はその後10年、遺産として効果が残るということで、この病初期の治療効果を「遺産効果」と呼んでいます。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。