医師不足による医療荒廃の深刻度は診療科目によって異なる。とくに深刻なのは産婦人科だ。その象徴のひとつが、全出産数の19%近くを占め、20年間で2倍に増えた帝王切開だ。日本医科大(東京都)の産婦人科医、市川雅男医師が言う。
「本来、緊急帝王切開で新生児を安全に娩出するには、手術を担当する医師が2人、麻酔と新生児をケアする医師がそれぞれ1人の計4人の医師が必要です。しかし、現実は人手不足でとても無理。特に危険なのが夜間です。多くの病院でいまだに産婦人科医が1人当直を強いられ、常駐する麻酔科医、新生児を診る医師はいない。何かあったら、すべて1人の医師がこなさなければなりません」
産婦人科医は普通の医師と異なり“母親と新生児のふたつの命”を同時に扱う。分娩時、新生児が低酸素症になれば30分以内に帝王切開等で体内から取り出し、救命しなければならない。このとき、母親が大量出血していれば、スーパーマンでもないかぎり、同時救命は不可能だ。
どうなる! 日本の医療