Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【北斗晶さんのケース(2)】手術の合併症リンパ浮腫は治る

佐々木健介、北斗晶夫妻(C)日刊ゲンダイ

 北斗さんのように脇のリンパ節を切除すると、腕がむくむことがあり、切除した方はしていない方より太くなりやすく、細い方の腕に合わせると服が着られないので、太い方に合わせたものを着ることになったりします。どの服もブカブカで、なかなかノースリーブは着られません。温泉や海水浴など肌を露出するレジャーは気分的に難しくなります。

 リンパ浮腫は女性の生活を左右することになりますが、原因はリンパの滞りですから、“渋滞”を解消すれば治ります。それが、スーパーマイクロサージャリ―と呼ばれる形成外科手術。具体的には、“渋滞”しているリンパ管を、近くの静脈につなげてバイパスを作製。リンパ管の直径は0.3ミリで、静脈は0.8ミリ。針の太さは20分の1ミリ、糸はその半分。微小な世界の外科手術だから、スーパーマイクロサージャリーです。

 北斗さんは失った右胸をなかなか直視できず、つらかったそうで、これから抗がん剤治療が始まるまでの間に、「全摘用のブラジャーを注文」すると気丈に語っていました。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。