医療数字のカラクリ

「生存率8カ月」と宣言され20年生きた生物学者

 米国の進化生物学者・グールドの「がんばれカミナリ竜」(早川書房)という本に「メジアン(中央値)はメッセージではない」という生存曲線についての興味深い記述があります。

 グールドは40歳の時に腹膜中皮腫というがんに侵され、生存率の中央値は8カ月であると告げられました。

 この場合、多くの人は「ああ、もう私は8カ月しか生きられないのだ」と絶望してしまうことでしょう。しかしグールドは、「よし、半分の人はもっと長く生きるんだな。私がその半分に入るチャンスはあるのだろうか」と考えます。そこで、文献を読み漁り、「若い患者」「早期発見されたかどうか」「最新の治療を受けているかどうか」などが、8カ月以上生きられるケースと関係していることを知り、自分がそこに含まれるかもという希望を持ちます。

 また、生存曲線の向かって右の端っこは、生存率がゼロにならずに長く伸びていることも確認します。つまり、「中央値8カ月」というのは、8カ月を超えるどころか何年も生きる人がいることを知るのです。こうして生存曲線を正しく理解すれば、絶望する必要はないことに気づきました。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。