独白 愉快な“病人”たち

元大関琴風・尾車部屋親方 尾車浩一さん (56) 頚髄損傷

(C)日刊ゲンダイ

 転院から4日後、神経の通り道を回復させる手術を受けて多少回復したものの、上体を起こすと起立性低血圧による貧血でクラクラする。手足はこわばるし、異常感覚があり、シャワーを浴びると千本の矢が全身に刺さるように痛い。大好きだった風呂が嫌いになるくらいでした。

 それから寝たきりの生活が続きました。リハビリは1日2回、手指を1時間曲げ伸ばししてもらうところから始めました。先が見えず、頬を伝う涙すら自分で拭うこともできない。ただただ天井を見るしかなかったよ。

 呼吸器をつかさどる部分も損傷を受けていたので、本来は胸に穴を開け、機械の力を借りて呼吸しなくてはならない状態だった。それが、私の場合は自力で呼吸ができたんです。自宅に訪問看護師さんが来た時は、「相当珍しい」と驚かれました。長年鍛えたおかげかもしれません。

 顔が知られてる分、最初はリハビリしている姿を見られるのが恥ずかしかった。でも、弟子たちに「我慢せい、諦めるな!」と言っていた手前、ここで諦めたら指導者失格だと思いました。

2 / 4 ページ