気の毒な被災者がいる。悲嘆に暮れている。そこにボランティア医師がやってきて、お話をうかがう。話しているうちに感極まって泣き始める被災者。大きくうなずき、温かい言葉をかけながら、被災者を包み込むような医師。そうして、涙、涙だった被災者に、次第に安堵の表情が浮かび、晴れやかな笑顔が戻る。最後に、「話を聞いてもらえた。先生、ありがとうございました」、そう感謝の言葉を述べる……こんなシーンをテレビは流したいのだと思います。
テレビ制作者の思惑は分かります。美しい「心のケア」の場面を番組に挿入して、震災報道の悲惨さを和らげたいのでしょう。
しかし実際には、被災地にテレビが好むようなドラマチックな「心のケア」ニーズは多くありません。
2011年3月11日、震災発生直後から「心のケア」の必要を強調する報道が大量にされました。全国の精神保健関係者は「心のケアチーム」を結成して現地に送り込み、被災地はボランティアたちであふれました。
薬に頼らないこころの健康法Q&A