薬に頼らないこころの健康法Q&A

心のケア不要 被災者に必要なのはプライバシーと薬剤確保

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 3カ月後の同年6月22日、読売新聞に意外な見出しが躍りました。

「拒否される心のケア…被災者、質問に辟易」

 記事によれば、次々にやって来るボランティアたちに、迎える側が困惑。ついに「『心のケアチーム』お断り」を宣告したといいます。新たに訪れたボランティアたちは、現地に到着するや否や「ここでは『心のケア』と名乗らないでほしい」と避難所の責任者にくぎを刺されました。ボランティアたちは当惑し、「何かご迷惑でも……」と途方に暮れ、失意とともに現地を去ったのでした。

■被災者にとってボランティアは「異邦人」

「心のケア」という言葉で第一にイメージすることは「悩みを聞くこと」です。しかし、実は、ここに誤解の淵源がありました。ボランティアたちは、被災者にとっては、突然やってきて一瞬で去っていく異邦人にすぎません。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。