また、心臓のそばで出血する場合は、たいていはカテーテル治療のトラブルによるものです。挿入したカテーテルをそのまま置いた状態にしておけば、どこから出血しているかが分かります。こうした経験を多く積んでいる外科医は、やはりそれだけ緊急手術の成績が良くなると考えていいでしょう。
それでも、残念ながら助けられなかったケースも当然あります。いちばん危険なのは、血圧が低くなり、全身に血液が十分に流れないショック状態になっている患者さんです。心臓だけでなく、脳、腎臓、肝臓など、さまざまな重要臓器が正常に機能できなくなるため、心臓を処置してもどうにもならないことがあるのです。実際、助けられない患者さんは、心臓以外の臓器障害、とくに腎臓が機能しなくなってしまうトラブルが多いといえます。もしくは、術後に感染を起こし、多臓器不全で亡くなるケースです。
緊急手術を行う前の段階で、予測死亡率が非常に高いケースもあります。以前に人工弁に交換する手術を受けている高齢の患者さんが、感染を起こして人工弁が外れてしまい、血液の逆流がひどくて心臓がヨレヨレになっている……といった状態だと、術前の予測死亡率が80%と手術に向かうことを躊躇するくらいになることさえあるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」