Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【遺伝子検査】入念なカウンセリングなしに受けるのはNG

遺伝子検査は遺伝カウンセリングとセットで考えて(C)日刊ゲンダイ

 日本でも、220以上の医療施設で実施。変異ありの判定を受けた人のうち乳房は50例以上、卵巣は100例近くの予防切除が実施されました。このような遺伝子変異があると、若くして発症しやすく、がんが複数にできたり、2つある臓器のがんだと両方にできたりする傾向があります。

 つまり、ある血縁に受け継がれる特定の遺伝子変異によって生じやすい遺伝性のがんの発症リスクを調べるのが、遺伝子検査です。誤解してほしくないのは、たとえば祖父も父も自分も胃がんだからといって、遺伝性の胃がんではないということ。世間でいわれる“がん家系”とは、ずいぶん違います。

 胃がんの場合、ピロリ菌感染の影響が強く、塩分の濃い食事が重なると、胃がん発症が助長されます。ピロリ菌感染や食生活は、家系や地域性が強く、遺伝よりそちらの影響が強いと考えられるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。