天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ベテラン医師でもベトナムの医療発展に貢献できる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 大きな問題は建物の老朽化です。ベトナムはもともと地震がない国で、いまでも1920~30年ごろのフランス植民地時代に建てられた建物が使われています。歴史的な遺産としては非常に価値のある建物と言えますが、最新の医療を行う病院としては適当ではありません。最新の医療機器を導入して、最新の治療を行うとなると、管理面や衛生面も含め、総合的に厳しいと言わざるを得ません。近代医療を行うためには、まず病院の建物を近代化する必要があるのです。

 また、最新の医療診断機器も不足しています。日本のODAなどの政府開発援助で医療機器は導入されていますが、まだまだ数も質も足りていません。高解像度の検査画像を撮影できる320列CT、精度が高く患者さんの負担が少ない最新鋭の内視鏡、3D内視鏡を備えた手術支援ロボット、安全装置がたくさん付いた人工心肺、手術台と心血管X線撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室など、最新医療を行うために導入すべき機器はたくさんあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。