普段から自分の体の変化に敏感になっていれば、医師でも気付かないことがわかるようになる。講演で山形に行った際、温泉に入った。入浴はしみじみと自分の体と対面できる。子供のころは興味本位で自分のチンチンをいじくりまわしたものだが、いい大人になればその部分に触れなくなってくる。だが入浴となると別だ。自分の分身をいたわり、愛情をもって手入れをする。手足を洗うのとは違う感慨がある。ゆっくりと自然のぬるま湯につかるのは最高だ。
ところがこの日はピリピリするような熱い湯だった。少し水を入れようとしたところ、高齢男性が入ってきた。僕が熱くて入れなかった湯に平然とつかっている。最初、彼はイキがっているのかと思ったが、そうではなかった。彼の股間のイチモツが証明してくれた。ダラリと袋のように垂れ下がっている。もう感度が鈍くなっているのだ。
高齢になると皮膚の神経細胞の数が減るため、温度に対する感受性が低下するからだ。若い人はちょっと熱くても大騒ぎをする。僕は体を洗いながら自分の分身に話しかけた。“いつまでもぬるま湯が好きな、若々しいおまえでいてくれよ。決してダラリと袋のように下がらないでおくれ”と。
橋本テツヤの快適老齢術