いま医療関係者の間で俄然注目されている「ケトン体」をご存じか? 人は飢餓や激しい運動により糖を分解できなくなると脂肪を分解してエネルギーをつくる。その際の副産物がケトン体で、これまで脱水や嘔吐、頻脈、低血糖、昏睡や意識障害などの原因として悪玉扱いされてきた。ところが最近は心臓や腎臓を保護し、神経を修復する善玉でもあるという考え方が広まってきているという。なぜか。東邦大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野の熊代尚記講師に聞いた。
「糖尿病専門医の間でケトン体が注目されたキッカケはSGLT2阻害薬と呼ばれる新しい糖尿病薬が、心臓病や脳卒中などの心血管疾患イベントリスクを減らすと報告されたからです」
SGLT2は腎臓の尿細管にのみ存在し、尿中に排泄されるグルコース(ブドウ糖)を再吸収する働きがある。これを阻止することで、血中のケトン体は増加したものの、血糖値はもちろん、脂肪肝や高血圧が改善した。