数字が語る医療の真実

肺がん検診の「CT検査」はハイリスク群向け

 一方、15年以上の喫煙歴があるような肺がんのハイリスク者を対象に、胸部のCT検査と胸部X線写真で、肺がん死亡を比較したランダム化比較試験があります。結果はCTによるがん検診により、100の肺がん死亡が80まで減ることが示されました。

 ただ、この研究での実際の肺がん死亡率を見てみると、6.5年で0.3%の肺がん死亡が0.25%まで減るというようなものです。CT検査での偽陽性の問題、被ばくによる他のがんの増加の問題、さらには生死に無関係ながんを発見してしまう問題などを考慮すると、いまだ一般的に勧められる検診ではありません。あくまで、肺がんの危険が高い人に限って検討すべきがん検診と言えるでしょう。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。