数字が語る医療の真実

「かっけ」は日本海軍が行った世界初の臨床実験だった

 多くのかっけ患者を出した日本の軍艦「龍驤」が日本に戻った後、今度は戦艦「筑波」が航海に出ることになっていました。海軍軍医の高木兼寛は、「このままの食料で航海に出ればまたかっけが多発する。しかし、タンパク質を含む食事に切り替えれば、かっけが予防できるはずだ」と考えます。

 そこで筑波を、龍驤とまったく同じ航路で食事のみを変えて航海に出す実験を行います。人類史上初となる臨床実験の幕開けです。

 筑波の食事は、彼の仮説に基づいて、タンパク質不足を補うため、毎日肉300グラム以上、コンデンスミルク、ビスケットなどを含む洋食風に変えられました。そして出航から1カ月半後、龍驤と同じ航路をたどり、筑波がニュージーランドに到着します。この時点でのかっけの発生は4人、いずれも軽症との報告です。しかし、龍驤でもニュージーランドまでの航海では3人の患者が発生したのみで、この時点でかっけは減ってはいません。

1 / 2 ページ

名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。