多くのかっけ患者を出した日本の軍艦「龍驤」が日本に戻った後、今度は戦艦「筑波」が航海に出ることになっていました。海軍軍医の高木兼寛は、「このままの食料で航海に出ればまたかっけが多発する。しかし、タンパク質を含む食事に切り替えれば、かっけが予防できるはずだ」と考えます。
そこで筑波を、龍驤とまったく同じ航路で食事のみを変えて航海に出す実験を行います。人類史上初となる臨床実験の幕開けです。
筑波の食事は、彼の仮説に基づいて、タンパク質不足を補うため、毎日肉300グラム以上、コンデンスミルク、ビスケットなどを含む洋食風に変えられました。そして出航から1カ月半後、龍驤と同じ航路をたどり、筑波がニュージーランドに到着します。この時点でのかっけの発生は4人、いずれも軽症との報告です。しかし、龍驤でもニュージーランドまでの航海では3人の患者が発生したのみで、この時点でかっけは減ってはいません。
数字が語る医療の真実