林太郎はその後、明治21年に帰国し、翌年かっけについて論じた論文を発表しています。そこでは、米麦半々の食事前後のかっけの減少は、たまたまかっけの減少期と重なっただけかもしれず、米麦半々食によりかっけが減ったとは言えない。“その食事による”というためには、一兵団を半々に分け、他の生活は同じにして、食事だけを変えて比較する必要があるというものでした。
これもまた、まっとうな反論です。今流の言い方をすれば、「米食と麦食を比較したランダム化比較試験の結果を待たなければ、結論づけることはできない」というわけです。
正しい理論に基づいた“結果的には間違った”反論により、かっけ撲滅に至る道のりはまだまだ混乱し続けるのです。
数字が語る医療の真実