がんと向き合い生きていく

肝臓がんのほとんどは肝炎ウイルスの感染が原因

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 肝臓がん(原発性肝細胞がん)の原因はほとんどが肝炎ウイルスの感染です。C型肝炎ウイルス感染の約半数は輸血によることが分かっていますが、残りの半数はよく分かっていません。Cさんも最初にC型肝炎が分かった時点で過去に輸血を受けたことはなく、症状も特にありませんでした。

 C型肝炎ウイルスの感染によって起こる長年の慢性肝炎で肝臓は線維化を来し、肝硬変となってしまいます。そこで肝細胞がんが発症しやすくなるのです。ですから、肝臓がんの80%は肝硬変を合併しているといわれています。

 かつては肝硬変は多量の飲酒が原因と考えられていましたが、お酒が原因となっている肝硬変の患者さんは約15%程度で、70%はC型肝炎ウイルスが原因だと考えられています。

■肝硬変治療の最中にがんが見つかる場合が多い

 肝臓がんはほとんどが無症状です。肝硬変の症状として、だるさ、食欲不振などがあり、進行すると腹水(お腹の張り)、黄疸などがみられます。また、肝硬変になると肝臓に血液を運ぶ門脈の流れが悪くなって食道静脈瘤ができ、破裂した場合は吐血として大出血を来すこともあります。こうした症状が表れる肝硬変の治療を受けている途中の検査によって、肝臓がんが見つかる患者さんが多くみられるのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。