がんと向き合い生きていく

各都道府県が「受動喫煙をなくす」条例を制定してほしい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 これらの有害物質は速やかに肺に到達し、血液から全身の臓器に運ばれ、DNAに損傷を与えるなどしてがんの原因となるのです。

 2010年、IOC(国際オリンピック委員会)とWHO(世界保健機関)は「たばこのない五輪の推進」で合意し、その後、五輪開催都市だったロンドンとリオデジャネイロでは、飲食店などの屋内全面禁煙が実現したそうです。そして、「その禁煙による飲食店の客離れはなかった」とする調査もあります。

 わが国の今回の健康増進法の改正では、2020年の東京五輪開催に間に合うように受動喫煙対策を強化するとされています。しかし、多くの医師は「これでは消極的で情けない案である」と反対しています。

 世界では禁煙対策によってがんは減ってきているのに、日本はこれでいいのだろうか。少なくとも受動喫煙がなくなれば、たばこを吸わないのに、たばこで亡くなる1万5000人の命は助かるのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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