Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

大腸がん大島康徳さんは1年 余命を気にしてはいけない理由

大島康徳さん(C)日刊ゲンダイ

 注目は、医師の回答です。「余命を聞きたくない」という医師は余命6カ月で3%、1~2カ月で5%と、患者や一般の都民よりかなり少ない結果でした。医師は「余命を知りたい」という思いが強く、その思いが「患者もきっとそうだろう」という判断に傾き、安易な余命告知を生んでいるのかもしれません。医療の進歩でがんは、早期なら治る病気になっています。しかし、がんと診断された人がショックを受けるのは、変わりません。診断から1年以内の自殺リスクは、そうでない方に比べて24倍。末期がんだと、診断と余命告知のショックが往々にして重なりますからなおさらでしょう。

 実は、私が余命告知をした翌日に病室で首吊り自殺された方がいました。その反省があるからこそ、一方的な余命告知は言葉の暴力だと思うのです。大島さんは「病気と闘うために生きるのではなく、人生を楽しむために生きるのだ」とも語っています。がん患者の皆さんは、ぜひ「人生を楽しむ」ことを大事にしてください。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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