iPS細胞の大きな特徴は「未分化細胞」であるということです。細胞というものは分化をどんどん繰り返して、ある特定の機能を持つようになります。まだ分化していない未分化細胞は、心臓や胃腸など体のどんな器官にもなることができるため、再生医療の分野で大きな期待がかけられているのです。
■いくつかの懸念も指摘されているが…
ただし、未分化細胞には大きな欠点があります。がん化したときの悪性度が極めて高いのです。心臓の筋肉を再生させるために未分化細胞を利用した場合、すべてが高度に悪性化してしまう可能性があるのです。
また、現時点でわれわれが考えている通りに病状が推移するかどうかもわかりません。かつて、末期的な重症心不全患者に対する切り札の治療法として心臓移植が登場したときもそうでした。心臓を移植した後は、拒絶反応を起こさないように免疫抑制剤を使います。その中でもいちばん多用されている免疫抑制剤が、後になって動脈硬化を促進することがわかったのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」