実録 父親がボケた

<15>介護疲労がたまりにたまり常識人の母が暴言を吐いて…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 仕方なく実家へ飛んで行き、父の目の前で弔電を打ってなだめる。漆盆付きで8000円なり。父はしばらく興奮状態だったが、さすがに娘がわざわざ東京から来て弔電を打ったことで、冷静になってくれたようだ。

 問題は父の認知症ではなく、母の対処だ。いつまでも興奮冷めやらぬ父に対して、苛立ちを募らせた母は差別的かつ暴力的な発言で応酬していたのだ。もうね、お互い罵り合うような大喧嘩ですよ。

 母の名誉のために書いておく。母は空気をちゃんと読むことができる、まっとうな常識人だ。思想は左巻きだが、上から目線で人を罵倒したり、出自や背景で人をさげすむことは、決してしない人である。

 ところが、今回の原稿に書けないレベルの暴言を吐く母を見て、改めて「在宅介護の弊害」を強く感じたのだ。

 そもそも、ひとりで歩けない父が葬儀に参列できるわけがない。口先だけで、認知症だから明日には忘れてしまう。うんうんと受け流せばいいものを、母は真正面で受け止め、売り言葉に買い言葉を展開しちゃったのだ。

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吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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