実録 父親がボケた

<20>認知症との付き合い方は否定せず、急がせず、焦らせず

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 足の裏をオイルマッサージすると、父は不覚にもよだれを垂らしたりする。また、水虫や湿疹、あざなどの皮膚の異変にも気づくことができる。たとえ素人であっても「見る」「触れる」の手足マッサージは効果的である。

 本を読んだり、認知症の講座を受けたりして学んだのは、「否定しない」「急がせない」「焦らせない」。さらに自己流で言えば、「友人や知人、会社員時代の人の訃報やお誘いは、父に伝えない」「父の怒りや寂しさを真に受けず、やんわり右から左へ受け流す」ことだ。同じ質問を1時間のうちに8回されても、8回とも同じテンションで答えることができるようになった。

 入所して3カ月経つ。確かに父は落ち着いてきた。3カ月が勝負というのは本当だった。今は、親の施設入居で迷っている人、罪悪感を抱いている人の背中をそっと押してあげたい気持ちである。

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吉田潮

吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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