患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

血糖値の急上昇や急降下に共通の条件や法則はない

マメに数値を測り、捕食するなどの対処をコントロール(C)日刊ゲンダイ

 僕はそれを、「井戸の水位を一定に保つための番人」に例えている。水位が高まってきたら、あふれないようにポンプでくみ出す。底が見えてきたら、水を注ぎ込んで安全な水位まで戻すのだ。

 ただ、そんな暮らしを十数年続けてきた身としては、それも結局イタチごっこにしかならないというのが実感だ。

 血糖値が高くなり過ぎる時や低くなり過ぎる時に、一定の条件や法則を見いだすことなどできない。

 注射したインスリンの効用のほどは、体調に大きく左右される。見込みより効き過ぎてしまう時もあれば、一向に効かない時もある。

 食べる量が多いか少ないかも、実はあまり関係がない。食べ過ぎたな、と思う時でも低血糖は起こるし、控えめにしか食べていないのにびっくりするほど血糖値が跳ね上がることもある。

 とにかく食べてみて、インスリンを打ってみて、結果を見てその都度、是々非々で応じるしかないのだ。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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