がん発症の妻にしてあげた10のこと

<9>一緒にがんを勉強する いまは患者が医療を選ぶ時代

小宮孝泰さん(C)日刊ゲンダイ

 小宮さんも一緒になって勉強した。

「男性の場合、医師に乳房の全摘を言われたら、『子供も大きくなったし、もうおっぱいは要らないだろう』と安易に考えがち。ですが、患者が納得した上の手術でないと意味はありません。本人が一所懸命に勉強しているのなら、こちらも勉強してあげなくてはいけません」

 佳江さんの勉強の対象は、がんに限ったものではない。一般の市販薬についても、熱心に本を読んでいたという。

「僕が風邪をひいたとき、普通に風邪薬を手にとったところ、『風邪を根本的に治す薬はない』と説明されました。解熱剤や咳止めなど対症療法の薬はありますが、せっかく体が体温を上げてウイルスを排除しようとしているのに、それを邪魔してしまったら、体はちっともよくならない。だから僕は葛根湯を飲むようになった。とはいえ、熱が出たら飲んでも構いませんよ。ただし、がんに関してはやっぱり命に関わる病気ですし、単に生きるか死ぬかだけではなく、いわゆるQOL(生活の質)にも関わってきます。ですから、『先生のおっしゃることでお願いします』というのではなく、自分たちで勉強しなくてはいけないと思うのです」

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小宮孝泰

小宮孝泰

1956年、神奈川県小田原市生まれ。明治大学卒。80年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」でTVデビュー。91年に佳江さんと結婚。2001年、31歳の佳江さんに乳がん発症。12年に永眠。今年9月に、出会いから別れまでの出来事をつづった「猫女房」(秀和システム)を上梓。

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