がんと向き合い生きていく

かつて温熱療法の臨床試験を行ったところがん患者の生存期間は有意に長かったが

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 寒い日が続く中、温かいお話をしましょう。

 がんは正常細胞よりも熱に弱い――。このことは昔から知られていました。がん細胞は42度以上、43度になると壊れていきます。

 以前、私たちはこの性質を利用して臨床試験を行ったことがあります。なかなか治療効果が得られ難い進行胆のうがんに対して、「温熱・化学・放射線の3者併用」と「化学・放射線の2者併用」とを比較しました(無作為化比較試験ではありません)。実際には、胆のうの部位にサーモトロンRF8という機械を外部から当て、病巣部にはセンサー針を挿入して42~43度の40分加温を確認し、これを週1回、放射線治療の直後に化学療法点滴と同時に行いました。その結果、3者併用群の平均生存月数は9・0±6・4で、2者併用群の5・5±4・4より有意に長かった(p<0・01)のです。

 しかし、時間がかかって患者さんの負担が増えること、そして放射線をより有効に当てられる強度変調放射線治療などの装置が開発されたことなどから、現在は私たちのところでは温熱療法は行っていません。全身の温熱療法は、体の深部まで温めるため、全身麻酔などで実施されることから患者さんの負担になるなどの問題点があり、いまは一部の施設でのみ行われているようです。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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