がんと向き合い生きていく

かつて温熱療法の臨床試験を行ったところがん患者の生存期間は有意に長かったが

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 あの時は初夏でしたが、ゴツゴツした岩の間からモウモウと水蒸気が湧き、硫黄のにおいが充満していてそれなりの雰囲気がありました。ここの温泉は酸性が強い点が特徴のようです。

 ところが、温泉につかる人よりも岩盤浴ができるテントに向かう人が多く見られました。岩から微量の放射線が出るらしいのです。

 私にはこれががんに効くとはとても考えられないのですが、ゴザやシートを包んで持ち、あるいは肩に掛けてテントの方に向かう人、戻ってくる人の列がありました。

 私はこの無言の列を遠くから眺めていました。楽しんでいるのなら良いのだが、頭を下げて前かがみになった方々は、悲壮な気持ちでおられるのではないか……と複雑な思いに駆られました。

 温泉といえば、がん対策の会議でご一緒させていただいた評論家の俵萌子さんが参加されていた「1・2の3で温泉に入る会」を思い出します。「乳がんで乳房のない女性が7~8人一緒になって温泉に入る会なのです」と、とても楽しそうに話してくださいました。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事