正社員で働く発達障害の人々

「変わっている」と言われ続けた理由を病名がついて納得

一色宏治さん(提供写真)

「大学院の課題や、就職してからも仕事が忙しくなると、過集中の状態になることで乗り切ってきましたが、これを1週間くらい続けると、夜中に頭の中でいろいろな考えが回って、眠れなくなる。一時的に集中力は上がるけど、基本能力は一切上がっていないので、長期的なパフォーマンスは向上していないし、しまいには疲れて反動で虚脱したようになって、うつ状態に陥ってしまう。そんな状態が続いて、5、6年はなんとか会社にしがみついている、という時期もありました」

 過集中とは、発達障害の人によくある状態で、過度に集中しすぎること。短期的には仕事や勉強の成績が上がることもあるが、結果的には、日常生活のバランスが崩れたり、心身に悪影響を及ぼすことも多い。

「私は発達障害という概念を知るまでは、自分のなかの『わけの分からないもの』と闘っていたように思います。『頭の中がわさわさする』『理由は分からないけど納得できない』といった症状がありましたが、発達障害というフィルターを通したとき、初めてその意味が分かったんです。『頭の中がわさわさする』のはADHDの特性で、『理由は分からないけど納得できない』というのは、ASDの特性だったのです」

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