歯の疑問 ずばり解決!

適切なインプラント治療は患者の生活の質を向上させる

歯を失った人の「噛む」ことが向上

 80代の女性で、下の奥歯に、入れ歯が入っている患者さんがいらっしゃいました。昔から漬物が好きだったそうですが、他院で部分入れ歯にされてからは噛み切ることが難しくなり、ただ、なめるだけでガマンされていたそうです。家族からの応援もあり、当院でインプラント治療を受けていただくことになりました。「右側でしか噛まないから」とおっしゃるので、右下の奥歯の位置に4本、埋入しました。治療後、「お漬物を噛めるようになったときは、うれしくて涙が出てきた」と感謝されたとき、心の底から良かったなと思いました。

 通常、「インプラントは左右に分けて均等に入れたほうがいいですよ」と説明を受けると思いますが、僕は年齢や生活習慣と本人の意思を尊重し、「その患者さんにとってベストな選択」をすることが歯科医師として最も重要だと考えています。

「噛むことは人生終盤に残された最後の楽しみ」ともいわれます。インプラント治療は歯を失われた多くの患者さんのQOL(生活の質)の向上に役立っていますが、さまざまな誤解があるのも現実です。

 そのあたりに関しても、この連載で取り上げていきたいと思います。 

 (構成=小澤美佳)

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北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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