夜泣きに追い詰められた母親が…乳幼児に睡眠薬投与の是非

乳幼児に睡眠薬処方は臨床の現場ではゼロではない

 関東にある総合病院から出された処方箋を見た薬剤師のAさんは驚いた。2歳に満たない赤ちゃんに睡眠薬が処方されていたからだ。“何かの間違いではないか”と思ったAさんは医師に疑義照会をしたが、「問題ありません。処方箋通りに出してください」と言われたという。処方箋を持ってきた母親に聞くと「(赤ちゃんの)夜泣きがひどく、ほとんど寝ないと相談したところ、処方された」と答えたという。実は臨床の現場では、こうした例は必ずしもゼロではないという。「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 Aさんによると赤ちゃんに処方された睡眠薬は「ラメルテオン」(一般名)だったという。体内時計のリズムを整えるメラトニンというホルモンに働きかけることで眠気を誘う薬だ。

「メラトニンの分泌量は夜中に増えて、明け方に向けて徐々に減っていきます。そのことで人は夜に眠くなり、朝方に目が覚めます。この働きを利用した睡眠薬です。夜中に途中で目が覚めてしまう人や朝早く起きてしまう人、熟睡できない人に投与されます。睡眠薬には脳の機能を低下させることで眠気を促すタイプと自然の眠気を強くするタイプがありますが、ラメルテオンは後者のタイプ。せん妄を起こす可能性も低く、比較的安全な薬です」

1 / 5 ページ

関連記事