進化する糖尿病治療法

糖尿病の発症1年未満は膵臓がんの発症リスクが5倍高い

定期的な検査で血糖をチェック(写真はイメージ)

 数値も劇的に変化。ヘモグロビンA1cは6台の標準値をずっと維持しており、「このままいけば、糖尿病の薬もやめられるかもしれない」と本人と話していたのです。

 ところが、ある時から急に、ヘモグロビンA1cのコントロールが悪くなりました。急に8台に上がり、下がらなくなったのです。改善した生活習慣をそのまま保っているのに、です。

 私は、血糖の適正値を維持していたのに急にコントロールが悪くなった患者さんや、一生懸命生活習慣改善に取り組んでいるのに血糖が高いままで下がらない患者さんの場合、必ずと言っていいほどがんを疑い、全身を検査します。この男性にもそのようにしたところ、早期の膵臓がんが見つかりました。

■血糖コントロールが悪い人はがんを疑う

 よく知られるように、膵臓がんは健康診断や人間ドックを毎年受けていても早期発見が難しいがんです。悪性度が高く、早い段階で転移が起こりやすく、再発リスクが高い。

2 / 4 ページ

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事