上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

若い世代に増加中の「梅毒」は心臓にも深刻な状態を招く

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ほかにも、大動脈が裂けて死亡リスクが高い大動脈解離を招いたり、冠動脈が詰まって狭心症が表れる場合もあります。また、細菌が大動脈弁に巣食うと大動脈弁逆流を起こします。

 ただ、ここまで悪化するのは第4期(感染後10年以降)で、最近はほとんど目にしなくなりました。梅毒にはペニシリン系とセフェム系の抗生物質がよく効くので、早期に治療を開始すれば進行せずに完治するのです。とはいえ、流れが変わってしまった今後は増える可能性もあります。自覚症状がないまま進行するケースもあるので、感染の不安がある人は定期的なチェックが大切です。

 梅毒は心臓手術にも大きな影響を及ぼします。患者さんが感染したままの状態で手術を行うと、医療者側に感染するリスクがありますし、院内感染にもつながりかねません。また、手術を受けると患者さんの抵抗力が一時的に衰えるため、感染があると病状が悪化したり、他の合併症にもかかるリスクが上がってしまうのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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