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米国における乳がん治療の実際<3>医師は意見を述べるだけ

写真はイメージ

 さて、3回目の手術の組織結果が良好だったので、Aさんはやっと手術から解放されました。これからは半年に一度、腫瘍専門医(オンコロジスト)の女性医師に会って、長く経過観察することになります。ありがたいことに、21世紀では乳がんですぐに亡くなるということはまずありません。これからは腫瘍専門医が主治医になり、タモキシフェンというホルモンを用いた抗がん剤の処方や、定期検査のプランもその先生が提案します。

 幸い、Aさんが出会った外科医と腫瘍専門医は素晴らしい人たちでしたが、それぞれの立場でプロフェッショナルとして淡々と意見を述べてくれるだけです。患者自らが果たす役割がとても大きいのです。

 米国には極端に人と人の関係性を重視する社会という側面があるので、Aさんの近しいコミュニティーに米国人医師がいたら、展開は違った可能性もあります。しかし、自分が動かなければいけないことは変わりません。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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