がんと向き合い生きていく

がんの「休眠療法」は有効性がいまだ科学的に証明されていない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 また、そうしたごくごく少量投与を休眠療法と呼んでいますが、この少ない量で「がん細胞が休眠状態になった」という証拠はまったくありません。ですから、標準治療が行われるようになってからは休眠療法は行われなくなったと思っていました。

 2001年、がんの専門誌で私は休眠療法を厳しく批判しました。あれから約20年たっていますが、今でも休眠療法は医学的に有効性を示すきちんとしたデータはありません。休眠療法を行う側の医師は、腫瘍縮小は必ずしも必要ではなく、「現状維持であればよい」と言われるかもしれません。しかし、この「現状維持」すら証明されていないのです。

 分子標的治療薬は、がん細胞のDNAを直接攻撃するのではなく、がん細胞が持っている特定の分子に対して作用することから、がんの増殖を抑えて大きさが現状維持でも生存期間の延長が認められています。これらの分子標的治療薬はしっかりした臨床試験が行われ有効であることが科学的にも証明されています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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