Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

仁科亜季子さんは38歳で子宮頸がん発覚 HPVワクチンの現状は?

女優の仁科亜季子さん(C)日刊ゲンダイ

 そんな状況を受け、実質中止状態を見直す動きが相次いでいます。接種を見送っているうちに、公費負担対象年齢を上回った人などから「われわれにも公費負担を」という声が上がっていますが、HPVはセックスで感染するため、成人女性でセックス体験があると、すでに感染している可能性があり、接種の意味はありません。もし成人女性が接種するなら、HPV感染の有無を調べてからがよいでしょう。

 HPVはセックスが媒介するため、子宮以外の部位にも、男性にも感染します。オーラルセックスの広がりで、男女ともに中咽頭がんが急増。ペニスや肛門、膣、外陰部などもがんになることがあります。ちなみに性器が外部に露出しているペニスは、皮をむいてしっかり洗うことで、感染リスクを抑えることができる可能性があります。

 男女にリスクがあるため、欧米では男性も女性同様に公的補助になっている国もあるのです。法定接種の対象年齢で接種しないと、総額5万円ほどの自費に。高額負担を強いられるので、接種しないリスクは、肉体的にも経済的にも重くなります。

 厚労省は「積極的勧奨をしない」ことの責任がありますから、無料接種の対象年齢の変更も検討すべきでしょう。

3 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事