がんと向き合い生きていく

絶望の中でも援助したい 終末期患者を看護するスタッフの思い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 B看護師ともう1人の看護師が死後の処置を行い、ご遺体を病室から霊安室に送り出したのが深夜0時。他の患者の見回り、重症者の看護、カルテの記載をして、B看護師が勤務を終えて病棟を後にしたのは夜中の1時を過ぎていました。

 翌日、B看護師は朝9時から勤務です。日勤ではたくさんの看護師が勤務しますが、それでもB看護師は、悪性リンパ腫の終末期で早朝から血圧が下がっていたFさん(27歳・男性)の担当でした。

 Fさんは午後2時に亡くなりました。数日泊まり込んでいたFさんの母親に私が「ご臨終です」と告げた時、B看護師は母親と一緒に泣いていました。廊下に出てきたB看護師の涙を先輩看護師が拭いてあげていました。

■とげぬき地蔵にお参り

 実は、その前週もB看護師が勤務のときに、担当した終末期の患者が息を引き取っていました。数日後、先輩看護師がB看護師に言いました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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