がんと向き合い生きていく

絶望の中でも援助したい 終末期患者を看護するスタッフの思い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「あなた、お地蔵さんのところに行ってきた?」

 B看護師は「うん、行ってきた。ちゃんとお参りしてきた。すっきりした」と答えていました。

 たしかに、その後しばらくはB看護師が担当した患者が亡くなることはありませんでした。

 とげぬき地蔵はその病院の近くにあります。科学が発達した今の時代でも、神か仏か、何か心霊的なものに頼りたくなることがあるのでしょう。

 終末期患者の死亡日時を推測するのは非常に難しいといえます。科学的にそれを明らかにしようとする論文があり、これを引用した論文や発表が見られます。ある報告では、患者の状態を点数化し、その合計点で「あと何日生きられるか」を推定しようとしています。

 たとえば、浮腫あり1・0点、寝たきり2・5点、経口摂取が減少した1・0点、呼吸困難3・5点、せん妄4点……こうしたさまざまな項目を点数化して、その合計がたとえば「6点以上では3週間以内に死亡する可能性が高い」などと予想するのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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