死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期

在宅医療のキーワードは「神父とうんこ」そう話す意味とは

小堀鷗一郎氏(C)日刊ゲンダイ

 シャツは黄色と決まっている。

「冬はタートルネックを着ることもありますが、それも黄色の“うんこ色”です。部屋で山盛りになっていることもあるし、患者さんに付けられることもある。それでインターネットで安いものを探して着ています。在宅医療は『神父とうんこ』なんです」

■自治体を相手に戦うことも

 知り合いの“神父”を呼び、死期が迫った患者を祝福してもらったこともあった。

「ケアマネジャーの資格も持っている元神父で、『先生、よくこんな仕事をしていて鬱にならないですね』と驚いていました。こっちは毎日のように想定外の事態に直面するのですから、鬱になんかなっていられない」

 自治体を相手に戦うこともあった。80代後半で2人暮らしの高齢夫婦が、夫の認知症を理由に引き離されたのだ。

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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