上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「手洗いが外科医の人生を決める」そう言っても過言ではない

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 私は、手洗いする3分ほどの時間を、手術に臨む自分自身を最終チェックする時間にしています。若いころとは違って、いまは頭にヘッドライトや拡大鏡をつけているので、そうした機材がピシッと真ん中に装着できているか。キリッと引き締まった表情をしているか……鏡の向こうの自分に問いかけます。仮面ライダーではありませんが、変身ヒーローがしっかり変身できているかどうかを最後に点検するイメージでしょうか。

 手洗いは、これから新たな手術に臨むに当たって、心も体も面構えもすべてが整っているかどうかを確認する最後の場なのです。

 外科医になって以来、これまで8000件以上の手術を執刀してきました。手洗いはその倍以上、2万回は洗っているでしょう。かつては、1日に4回も5回も手洗いする機会が当たり前のようにありました。手洗いはいったん正しい方法を身につければ、自転車の乗り方や泳ぎ方と同じように体が勝手に覚えてくれるものです。ですから、私の体には正しい手洗いがしみついています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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