Dr.中川 がんサバイバーの知恵

全摘だと生活一変 食道がんで治療後の食生活を守る選択肢

お酒はほどほどに…(C)日刊ゲンダイ

■小澤征爾さんは食道がんの手術後15キロ痩せた

 逆流性食道炎になると、胃の粘膜が食道とのつなぎ目を越えて、食道側に延びることがあります。その状態がバレット食道で、欧米の研究でバレット食道の人は健康な人に比べて最大125倍も食道がんになりやすいのです。

 食道がんには、扁平上皮がんと腺がんの2つのタイプがあって、それぞれの頻度は9対1。よく知られる飲酒や喫煙がリスクになるのは前者で、バレット食道がリスクになる後者は肥満もリスクで、メタボやそれに伴う逆流性食道炎の増加で今後、増えることが予想されます。お酒を飲むと逆流性食道炎が助長されますから、頭に入れておくといいでしょう。

 もうひとつ、今回のケースでは転移がなく、抗がん剤をしてから手術をすることが公表されています。実は食道がんの手術は、食道の病巣を切除した上、胃の3分の1を切除し、残った胃を細長く延ばして、残った食道とつなぐ大がかりなものがほとんどです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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