新型コロナの感染効率に関わる変異が世界中で起きつつある

新型コロナウィルスの電子顕微鏡拡大写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 同時にSタンパク質はウイルス表面に存在するため、獲得免疫応答を引き起こす抗原となる場合も多い。世界各地で開発が進んでいる新型コロナウイルスに対するワクチンの多くもSタンパク質をターゲットとしている。したがって、Sタンパク質の変異は免疫・ワクチンの効果を変化させる可能性もある。

 最近、Sタンパク質の変異について網羅的に検証した論文が公開された。80種類の変異を調べたところ、「感染効率の上昇に関与」と確認された変異は1つのみであった。その変異はヨーロッパを中心に感染拡大した新型コロナウイルスに見つかっているもので、日本にも3月以降に広がり、現在、日本で広がっている新型コロナウイルスは、ほぼすべてこの変異を持っていると考えられている。

 一方で、感染効率が減少する変異は数多く、20種類以上の変異は感染効率の減少に関与することがわかった。そして、それ以外の変異については感染効率に関して、ほぼ影響がなかったとのことであった。感染効率が上昇したものは、免疫応答に関しては特に変化がなかったが、いくつかの変異はいままでのコロナウイルスの免疫応答から逃れるような特徴を持っていた。

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