それが、いまはその公衆衛生に医療安全、医療倫理、EBMなどの考え方が組み込まれ、学生時代に学ぶ問題の6~7割は公衆衛生が絡んでいます。
たとえば、ある疾患があって、医師がその疾患に対してどのような治療をすればいいかを考える時、かつてはその患者さんが抱えている背景=因子は無視されている状態でした。しかし、たとえ同じ疾患だったとしても、患者さんによって生活パターン、食事や運動の習慣、喫煙や飲酒の状況、ストレスを受ける環境などの背景は異なります。そして、そうした背景こそが疾患の原因になっているケースが多いことから、遺伝的背景や生活習慣は解決の糸口にさえなっているのです。
これは、公衆衛生に関わる客観的な大規模データが出てきたことで明らかになってきた「生活習慣病」という概念で、それまではたしかな根拠はありませんでした。それがいまは患者さん一人一人の背景によって、適切な治療が変わってくるという考え方が当たり前になりました。医師国家試験でも、その患者さんの生活習慣から予想される状況において、どんな治療がいちばん安全かつ効果があるかを考えさせる問題が増えています。いまの医学生は、以前よりも覚えるべきことが多くなったといえるでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」