進化する糖尿病治療法

がんの抑制に期待 古くて新しい薬「メトホルミン」に注目

写真はイメージ(C)PIXTA

 それは、がんのリスクを低くする可能性です。メトホルミンはインスリンを増やさず、肝臓などで「AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)」を活性化させ、がんの発症を抑制すると考えられています。

 AMPKは、細胞のエネルギーが低下している時にグルコースと脂肪酸の取り込みと酸化を活性化する酵素で、この活性化で代謝が良くなり、インスリン抵抗性が改善されます。

 また、がん化した細胞やウイルス感染した細胞などの殺傷・除去に関わるキラーT細胞「CD8」をメトホルミンが活性化させるという研究結果や、高血糖で過剰に産生されるミトコンドリア由来の活性酸素をメトホルミンが抑制し、がんや心血管障害などのリスクを下げるという研究結果も報告されています。

 糖尿病は膵臓がんをはじめ、さまざまながんのリスクを高めますから、メトホルミンがそのリスク低減に役立つなら、その意味は非常に大きいと言えます。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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