ニューヨークからお届けします。

新型コロナワクチン接種を妨げるアメリカ医療の暗い歴史

黒人男性死亡事件で全米各地で大規模抗議デモが…(C)ロイター

 さらに抗生物質で治療できることが分かってからも、一人もその治療を受けていないなど、倫理的に深刻な問題を抱えながらも、実に40年間にわたって続けられました。1972年、内部告発によってようやく終止符が打たれ、97年、クリントン大統領が正式に謝罪を行いましたが、黒人コミュニティーの間ではトラウマと医療に対する強い不信が残りました。

 こうした歴史に加え、今回のワクチン治験で黒人の治験者が人口比に対して極端に少ないことも不信の原因として指摘されています。

 2020年はコロナ禍の中でブラック・ライブズ・マター運動が起こり、黒人に対する差別の歴史が次々に白日の下にさらされました。これはトランプ政権の下で明るみに出たアメリカの分断が、ずっと前から存在していたことを示すものでもあります。

 こうした差別や分断を超えてワクチン接種が行われなければ、全体の命を救えません。21年に新たな政権を取るバイデン氏の下で、こうした不信が解決できるかに人類の未来がかかっていると言っても大袈裟ではないのです。

2 / 2 ページ

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事