がんと向き合い生きていく

大腸がんの同僚を診た医師が自分の腹部にも痛みが出始め…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 体重は4キロも減り、見た目もげっそりしてきました。結婚式当日も、祝宴の食事にはほとんど手をつけず、田舎から出てきた姉には「娘さんいなくなるのが寂しいんじゃないの?」と冷やかされました。

 それでも、どうにか無事に娘の結婚式を見届けることができました。A医師がさっそく消化器内科医長に相談したところ、翌週に大腸内視鏡検査を予定してくれました。

 内視鏡の検査中、医長から「A先生、S字状結腸のところの粘膜が少し赤くなっています。でも、がんはありませんよ。写真を撮っておきますね」と言われました。がんは一切なかったのです。

 検査の前処置としてすべての便を出した影響もあったのでしょうか、その後、腹痛などの症状もまったくなくなりました。

 A医師は、「この2カ月の腹痛は何だったのだろうか? 患者さんを相手に誤診することなんてないのに……やっぱり『病は気から』なんだろうか。自分のことになるとこの体たらくとは」などと思いながら、スマホに送られてきた娘の新婚旅行の写真を眺めました。

 医師も自分のこととなると素人も同然です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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