上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

デバイスを使うほど高度な医療を誰もができるようになるが…

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ただし、治療レベルを維持するための現場教育や医療安全管理が厳格に取り扱われなければならず、実施する医師の粗製乱造は絶対に戒めなければなりません。

■突出した医師が生まれなくなる可能性も

 少し噛み砕いてお話ししましょう。たとえば、いま目の前に紙とペンがあると想像してください。ある出題者がその紙にペンを使って何らかの問題を書き出し、解答を求めたとします。そうした状況になった時、偏差値の高い人は解答を出すまでのスピードが速く正解率も高くなります。逆に偏差値の低い人は解答が遅いうえに間違いも多くなります。

 しかし、その問題を3択形式にした場合、偏差値の高い人と低い人の解答スピードや正解率は差がなくなっていきます。さらに、偏差値の高い人にはスマホの使用を禁止し、低い人はスマホを使ってネット検索してもOKといった条件を加えれば、偏差値が低い人のほうが正解率がよくなる可能性もあります。つまり、何らかのデバイスを介入させればさせるほど、もともとの偏差値=能力差は小さくなっていくということです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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